研究概要 |
(1)南北大西洋域における植物プランクトンの基礎生産力に対する紫外線の影響 南北大西洋域(北緯43度〜南緯42度)の10観測点において、現場の植物プランクトンを太陽下で培養して、試料を得た。基礎生産力測定には、炭素安定同位体^<13>Cをトレーサーとして用いた。また、現場の紫外線B放射量を紫外線B放射計で連続測定した。観測期間中の紫外線B放射量は、赤道付近で相対的に高く、高緯度に向かうにつれて減少した。北半球及び赤道付近の観測点における植物プランクトンの基礎生産力は紫外線B放射の有無で統計的な違いがあまり認められなかったが、南半球の幾つかの観測点では紫外線B放射により基礎生産速度が有意に減少(30-50%)した。 (2)室内培養系における紫外線照射による植物プランクトンの基礎生産力の変化 南極海において汎存する植物プランクトンの培養株5種(Chaetocerous dichaeta,Nitzia sp.,Odontella weissflogii,Phaeocystis sp.,Rhizosolenia sp.)に人工的に紫外線を照射し、(1)と同様の方法で、基礎生産力の変動を調べた。この実験から、Rhizosolenia sp.、Phaeocystis sp.、Odontella weissflogii、Chaetocerous dichaeta、Nitzia sp.の順で紫外線B放射に弱いことがわかった。Rhizosolenia sp,及び Phaeocystis sp.の紫外線に対する耐性の強さは、南極海の夏期に、これら2種が植物プランクトンブルームをよく形成することと関係があるかもしれない。 来年度は、これら基礎生産力の変化を説明するために、(1)、(2)の試料と同様のものを用いて、生化学物質を分析し、投稿論文を作成する。
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