研究概要 |
1.露水の酸性度と化学組成の地域特性の解明…1997年には都市部の横浜で74試料,町田市郊外で9試料の露水が採取された.同時採取した露水組成を比較すると,横浜の方がすべての溶存成分濃度が高く,特にS(IV)濃度に大きな違いが見られ(横浜:109-152μM,町田:3.26-63.7μM),都市部と郊外地域では大気中汚染物質濃度を反映して都市部の露水中成分濃度が高いことが明らかとなった.なお,丹沢大山の中腹で一週間の連続採取を試みたが,露水試料を得ることはできず,来年度の課題である. 2.露水の化学組成の支配要因の解明…1997年の露水の平均pHは4.37(3.04〜7.88)、総イオン濃度は2.06meq/Lであった。pHは春に最低値をとったが、総イオン濃度は露水量の少ない夏季に高くなる傾向がみられた。露水内成分濃度の支配要因として、ガスおよびエ-ロゾルの大気中濃度、乾性沈着速度および露の存在時間などが考えられるが、露水量の影響が大きいことが示唆された。 3.露水酸性度の支配要因…露水酸性度の重要な中和成分であるNH_4^+およびCa^<2+>濃度と露水pHとの関係を検討した.NH_4^+およびCa^<2+>濃度が高くなるほどpHは増加したが、pH7以上ではCa^<2+>濃度の方が高く、中和作用としてはNH_3ガスよりもCa塩の寄与の方が大きいことが明らかになった。1997年8月29日にはこれまでの最低pHを示す露水(pH3.04)が採取されたが,この露水ではNO_3濃度がSO_4^<2->濃度の2倍以上であった.この時には大気中HNO_3ガス濃度が0.29-2.88ppbと高かったことから,この露水は大気中のHNO_3ガスを吸収して酸性化したものと言える.また,S(IV)の液相酸化剤として重要なH_2O_2濃度を測定したところ,0-1.78μMの濃度範囲で露水中に含まれていることが明らかになった.
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