ヒトT細胞型白血病由来MOLT-4細胞はX線によりアポトーシスを示す。X線誘発アポトーシスの機構を明らかにするため、胸腺細胞のX線誘発アポトーシスのモデル系としてMOLT-4細胞を用い、本年度は1.p53蓄積機構の解析と、2.ICEファミリープロテアーゼ(caspase)の関与の解析を行った。 1.p53蓄積機構の解析 X線照射後MOLT-4細胞では、X線感受性の異なるサブクローンMOLT-4N1、N2ともにアポトーシスに先行してp53蛋白質の増加がみられる。この増加はmRNAの誘導合成を伴うものではないことから、X線はp53mRNA量の変化をおこさず、蛋白量を増加させることが明らかとなった。また、蛋白合成阻害剤シクロヘキシミドによる合成阻害時のp53蛋白量の変化およびRI標識アミノ酸によりラベルしたp53蛋白質の免疫沈降により、p53蛋白質蓄積はX線による分解速度の低下に困ることが示唆された。 2.ICEファミリープロテアーゼ(caspase)の関与の解析 ICEファミリープロテアーゼは、現在caspaseと呼ばれている。caspase-1の阻害剤YVAD-CHOとcaspase-3の阻害剤DEVD-CHOを用いて、MOLT-4細胞のX線誘発アポトーシスへの抑制効果について検討した。DNAラダーの検出および色素排除能テストによりアポトーシスへの影響を検討した。YVAD-CHOにはアポトーシスへの抑制効果はなく、DEVD-CHOでは、濃度に依存してアポトーシスが抑制された。この系におけるアポトーシスでは、caspase-1ではなく、caspase-3の関与が重要であると考えられる。
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