研究概要 |
本研究では、大腸菌内で水素生産に関与するタンパク質の役割を決定し、さらに分子進化工学を駆使することによってこれらを改変・進化させて、環境に負荷を与えない効率的な水素生産プロセスを構築することを目的としている。大腸菌はhypFと呼ばれる調節遺伝子を有し、ヒドロゲナーゼの酵素活性はHYPFタンパク質により厳密に制御されているが、実際の機能に関してはまだ詳細な検討がなされていない。そこで特に今年度は、hypFを高発現用ベクターに組み込んでHYPFの大量発現系を確立し、その機能を解析することを目的とした。 すでにクローニングし塩基配列が明らかになっているhypF遺伝子を高発現用ベクターpGEXに連結した。構築されたプラスミドを用いて大腸菌BL21を形質転換し30度で振とう培養した。そして600nmでの吸光度が0.5になったところでイソプロピルチオガラクトピラノシドを最終濃度1mMになるように添加し、HYPFの発現を誘導した。タンパク質の発現は、SDS-アクリルアミドゲル電気泳動によって確認した。大腸菌破砕液をグルタチオン固定化カラムに流し、さらにプロテアーゼを作用させることによって、精製HypFタンパク質を得た。このHypFと金属との相互作用を調べるため、HypF固定化カラムにMg,Fe,Niイオン溶液を流し、その後溶出させたHypFが持つ金属をICP原子発光分光分析により同定した。その結果、HypFはその分子内にNiを配位させることが示唆された。
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