研究概要 |
含金属-EDTA錯体廃液の一つである,大学の学生実験「キレート滴定法による水の硬度測定」により発生した廃液の処理に、二酸化チタン光触媒分解法の適用を試みた。 強アルカリ性の本廃液には,Zn-EDTA及びCa-EDTAはそれぞれ2.1mM及び1.4mM含まれていたが,Mg-EDTAはほとんど含まれていなかった。本廃液中の錯体,全有機炭素(TOC)及び総亜鉛濃度の減少効率に及ぼす希釈倍率の影響について検討したところ,錯休及びTOCにおいては希釈により効率が低下する傾向を有していたが、亜鉛においては10倍希釈時に減少効率が最大となった。また最適なpH領域は,錯体及びTOCの減少においては酸性,亜鉛の除去においては微酸性付近であった。以上の結果を踏まえ,10倍に希釈した廃液をpH4-5に調節し,二酸化チタンを添加して(0.50mg/ml)高圧水銀灯で光照射したところ,120分間で錯体濃度を90%以上,600分間でTOC及び総亜鉛濃度を75%程度それぞれ減少させることが可能であった。 次いで,太陽光を利用した廃液の処理を試みたところ,晴天であれば1日程度の光照射により錯体を95%以上分解できることを認めた。また数日間光照射することによりTOC及び総亜鉛濃度も着実に減少させることが可能であった。光照射後,廃液中粒子の約70%が200cm/h以上の沈降速度を有しており、特別な処理を施さなくても2日間程度の放置により粒子はほぼ完全に沈降した。 以上の結果から,二酸化チタン光触媒分解法はキレート滴定廃液の処理に適用可能であると考えられる。また,本法は,操作が簡単である,特別な装置が必要ない、太陽光による処理が可能である,等の利点を有することから,キレート滴定廃液の原点処理法として応用が期待される。
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