水銀による環境汚染は世界的規模で進行しており、わが国においても水俣・新潟の水銀公害を経験しており、水銀汚染地域の浄化は急務の課題である。筆者は、微生物の有用遺伝子を利用した水銀浄化を実現化する目的で、本年度はPseudomonas K-62のplasmid pMR26上の水銀耐性遺伝子の構造および機能を解析することに焦点を合わせ、以下の知見を得た。本遺伝子の機能解析、塩基配列決定およびホモロジー検索の結果より、merR(regulator)-operator/promoter(O/P)-merT(transport gene)-merP(mercury binding gene)-merA(mercuric reductase)-merE(new gene for mercury resistance)-merBl(organomercurial lyase)およびmerR(regu1ator)-O/p-merB2(organomercurial lyase)-merD(promoter-dista1 end of the operon)から構成された、有機水銀化合物の分解を支配する二組のmerオペロンの存在が明らかとなった。また、マキシセル法により、13-kD(MerT)、9.2-kD(MerP)、60-kD(MerA)、20-kD(MerE)、23.5-kD(MerB1)および23.5-kD(MerB2)の産物が検出された。これらの産物の分子量は塩基配列から予測される分子量とほぼ一致していた。以上、Pseudomonas K-62の強い有機水銀耐性は、pMR26上の有機水銀化合物の分解をつかさどる二組のmerオペロンに起因することを明らかにした。本研究により得られた知見は、。微生物の水銀代謝能を利用した水銀汚染地域の浄化を将来的に実現化するために有益であると考えられる。
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