研究概要 |
1.瀬戸内地方のマツ枯れ後の植生タイプの変化および面積変化を明らかにし,国際植生学会シンポジウムIAVS'97 symposium(チェスケ・ブデヨウビッツ,チェコ)で発表した. (1)マツ枯れによりアカマツ二次林の面積は減少し,コナラ-アラカシ群落およびアラカシ群落などの落葉広葉樹林および常緑広葉樹林が出現した. (2)アカマツ二次林の中では,遷移初期のヒサカキタイプなどの面積が減少したのに対し,遷移後期のマンリョウタイプやベニシダタイプの面積が増加した. (3)マツ残存林に占める遷移初期のヒサカキタイプなどの割合が増加したのに対し,遷移後期のマンリョウタイプなどの割合は減少した.その結果,遷移初期のアカマツ二次林のみが残存林として維持されると推定された. 2.また,植林起源でパッチ状に分散して分布している房総半島において,丘陵地域,平野地域および都市近郊地域におけるマツ枯れ以前のマツ林パッチのサイズ,形状および隣接植生などの地域的な差を明かにした. (1)丘陵地域,平野地域,都市近郊地域ともに小面積のパッチがほとんどであったが,特に丘陵地域においては農地と隣接して利用されていたと思われる小面積のパッチの割合が高かった. (2)パッチの形状は,曲線単純型がすべての地域で最も多いタイプであったが,都市近郊地域では人工的パッチを意味する直線形のものが多く,平野地域では最も複雑な曲線分枝型が多く,他の地域よりも複雑であることを示していた. (3)マツ残存林は都市近郊地域における居住地に囲まれた小規模の並木の様な直線状線形のパッチで,よく管理されたものであった.
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