研究概要 |
1. マツ林が連続して分布している瀬戸内地方において,マツ枯れ被害度とアカマツ二次林の遷移段階との関係,およびマツ枯れ後の植生タイプの変化を面積変化から明らかにした.その成果は,Applied Vegetation Science誌ならびに国際生態学会,国際植生学会シンポジウムなどで発表した. (1) マツ枯れによりアカマツ二次林の面積は減少し,コナラ-アラカシ群落およびアラカシ群落などの落葉広葉樹林および常緑広葉樹林が出現した.また,アカマツ二次林の中では,遷移初期のヒサカキタイプなどの面積が減少したのに対し,遷移後期のマンリョウタイプやベニシダタイプの面積が増加した. (2) マツ残存林に占める遷移初期のヒサカキタイプなどの割合が増加したのに対し,遷移後期のマンリョウタイプなどの割合は減少しており,遷移初期のアカマツ二次林のみが残存林として維持されると推定された.2. また.植林起源でパッチ状に分散して分布している房総半島において,丘峙地域,平野地城および都市近郊地域におけるマツ枯れ以前のマツ林パッチのサイズ,形状および隣接植生などの地域的な差を明らかにした. (1) 丘陵地域において,農地と隣接して利用されていたと思われる小面積のパッチの割合が高かった. (2) パッチの形状は.都市近郊地域では人工的パッチを意味する直線形のものが多く,平野地域では最も複雑な曲線分技型が多く,他の地域よりも複雑であることを示していた. (3) マツ林バッチと隣接している植生は,丘陵地域では落葉広葉樹林が多く,マツ枯れ後,広葉樹林に遷移が進みやすいに対し,都市近郊地域では居住地や畑,平野地域では畑や水田が多く,マツ枯れ後の遷移は進みにくいことが示唆され,マツ枯れ跡地の動態解析においても景観生態学的観点が重要であることが明らかになった.
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