研究概要 |
本研究は、当研究室で開発したγ,δ-エポキシアクリル酸エステルとトリメチルアルミニウムを用いる立体特異的メチル化反応を基盤として、ポリプロピオネート系天然物である抗生物質のストレプトリジジン、及び新しい免疫抑制剤として現在非常に注目されているディスコデルモライドの全合成を行い、供給ルートを確立すると共に作用機構の解明を行い、医薬品の開発に資することを目的として行われたものである。本年度の成果の概要を以下に記す。 (1)ディスコデルモライドの立体選択的合成 今回は、5連続不斉中心を含むディスコデルモライドのC14〜C24セグメントの効率的に合成を行った。出発原料にmethyl(S)-3-hydroxy-2-methylpropionateを用い、8段階でγ,δ-エポキシアクリレートを得た。これを10当量のトリメチルアルミニウムと6当量の水で処理すると100%の位置および立体選択性でメチル化反応が進行した。更に3段階を経て残りの不斉中心を導入し、必要な5連続不斉中心を全て構築した。またセレンを導入したWitting試薬を用いてC21〜24位のジエンの構築にも成功した。 (2)ストレプトリジジンの立体選択的合成 ジオキサビシクロ環部、及び4連続不斉中心を含むC3〜C14位までのセグメントの合成を行った。まずγ,δ-エポキシアクリレートを基質に用い、トリメチルアルミニウム-水系により立体特異的メチル化反応を2度繰り返し行い、4連続不斉中心の構築を行った。またアルドール縮合で3炭素増炭した後に分子内アセタール化し、ジオキサビシクロ環部を合成した。これによりストレプトリジジンの重要合成中間体と考えられるジオキサビシクロ環を含むC3〜C14セグメントの合成に成功した。
|