グアム産紅藻カタオゴノリpolycavernosa tsudaiより単離されたポリカバノシドAは食中毒原因物質と推定されている。しかし、天然産生量が極微量かつ安定しないことから、部分的な相対配置が決められたのみで、全体の相対配置および絶対配置は決定されていない。オゴノリの毒化のメカニズムの解明、毒の作用機作の解明のうえで、有機化学的構造決定と人工合成的供給が求められている。本申請者は、ポリカバノシドAの全合成と全相対配置決定を同時達成を目的とし研究を行っている。 平成9年度は、ポリカバノシドAの全体の相対構造の決定とキラル全合成を計画し、ほぼ予定通り進行している。これまでに提出されている構造に基づき、ポリカバノシドAをTHF環部、THP環部、キシロース部、フコース部、トリエン部の5つに分割し、それぞれのセグメントの両対掌体を合成した。次に、フコース部を起点に、1セグメントずつ両対掌体をそれぞれ伸長し、生じたジアステレオマ-をその都度天然標品と各種スペクトルを比較し、一致するもののみ次の伸長を行う方法で、キシロース部、THP環部を順次連結し、天然物の南半球部分に相当する部分を合成した。この段階で天然物のNMRに基づく立体化学データとあわせることで、全体の相対配置を推定した。この推定に基づき、望ましい立体化学のTHP環部とTHF環部の両セグメントから、12員環ラクトンを経由して、中央部の13員環ラクトンを得た。現在さらに糖鎖を連結し、全不斉中心が揃い、全合成までトリエン部導入を残すのみとなっている。この段階でのスペクトルデータはトリエン部を除く全ての部分で天然物と良い一致を見ており、推定した全体の相対配置を支持する結果となっている。
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