局所麻酔薬であるぺんサイクリジン(PCP)のフッ素誘導体の合成を試みた。シクロヘキサノンにピペリジンを作用させ、シッフ塩基とした後、これに種々のフッ素フェニルグリニャ-ル試薬を作用させPCPのフッ素誘導体を得た。この内、パラ位にトリフルオロメチル基を有する物は、本実験条件下で不安定であることが判明したので、オルト位にトリフルオロメチル基を有するPCP誘導体を使用することとし、生理活性試験を行った。ニコチン性アセチルコリン(nAChR)に対するアンタゴニスト活性試験を行ったところ、Ki=113nMというまずまずの値を得ることができた。また、レセプターとの結合実験に必要である競合阻害剤を見つけるため、PCP誘導体の競合阻害実験をも行った。種々の化合物を検討した結果チオフェン誘導体であるTCPが効率よく、このPCP誘導体をレセプターより追い出すことを見いだした。さらに、フッ素固体NMRのために、PCPのフォトアフィニティー実験の条件について詳細な文献検索をおこなった。また、フッ素固体NMRのついもNMRメーカーである日本電子の技術員と詳細な議論を行い、その汎用性について検討した。さらに、フッ素官能基間の距離測定を目的として、モデル化合物の再検討を行った結果、以前緩和時間等の問題により使用不可能と考えられていたモノフッ素官能基が実験条件によっては使用可能であることを見いだした。これによりより効率的なモデル化合物を新たにデザインする事が可能になった。
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