研究概要 |
【目的】シソにおいてアントシアニン生合成各ステップの酵素をコードするいわゆる構造遺伝子群は,変動特異的に発現し,しかも光照射により同調的に誘導される。このような一連の遺伝子群の協調的な発現制御には,MYC,MYBホモログなどの転写因子の関与が観測される。このことを明らかにするために,アカジソおよびアオジソからMYCホモログをコードするcDNAを単離して機能解析を行った。 【実験・結果】キンギョソウのdelila cDNAをプローブとして,アカジソからMYCホモログ(MYC-RP)をコードする3種のcDNAを得た。これらのクローンのORF領域は同一であったが,5′非翻訳領域が異なっていた。ノーザン分析とウェスタン分析より,このMYCホモログ遺伝子はアカジソとアオジソの葉で同程度に転写,翻訳されていることが示された。そこで,MYC-RP cDNAをプローブとしてアオジソからMYC-GP cDNAを単離した。MYC-GP cDNAは,5′非翻訳領域はMYC-RP cDNAの1つと同一であり,第132番目のアラニンがセリンに点変異していた。また,MYC-RPあるいはMYC-GPを導入したトランスジェニックタバコにおいて花冠に通常の2〜3倍量のアントシアニンが蓄積されることが明らかになった。 次に,酵母を用いたOne-hybrid systemによりMYCホモログの転写活性化能を解析した。転写因子GAL4のDNA結合ドメインと融合したMYC-RPおよびdelilaタンパクは、GAL4によって活性化されるGAL1プロモーターからの転写を活性化した。一方,点変異のあるMYC-GPには転写活性化能がなかった。さらに,アカジソのジヒドロフラボノール還元酵素(DFR)遺伝子のプロモーターによる転写も,MYC-RPによって活性化された。
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