大腸菌における蛋白質膜透過反応において、SecAとSecGが反応に共役して大きく構造変化することが明らかになっている。申請者らは、膜内在性因子SecGが膜内配向性の反転・回復サイクルを繰り返すといった、膜蛋白質に対する常識を覆すほど大きな構造変化を引き起こしていることを発見した。膜透過反応におけるSecGの機能と膜内配向性の反転との関連を明らかにするため、欠失SecG変異体の構築しそれらの機能解析を行い、以下の成果を得た。SecGの2番目の疎水的な領域は約30アミノ酸からなる領域であり、膜は貫通せず細胞質側に露出している。この領域の疎水性が配向性の反転や他のSec因子との相互作用に重要であると考えられている。この領域から3〜4アミノ酸を欠失させた一連の欠失SecG変異体をDNAレベルで7種類構築した(計画1)。まず、欠失SecG変異体がsecG遺伝子破壊株の生育の低温感受性が抑制されるかどうか調べた。30アミノ酸のうち、前半15アミノ酸中に欠失を持つものは生育したが、後半15アミノ酸中に欠失を持つものは生育しなかった。この結果はSecG遺伝子破壊株の蛋白質膜透過の阻害の抑制と合致していた。これらの結果からSecGの機能には後半15アミノ酸残基が重要であることが判明した(計画2)。さらに、secG遺伝子破壊株で欠失SecG変異体を発現させ、反転膜小胞を調製し、その蛋白質膜透過活性をin vitroで測定したところ、in vivoの結果と一致していた。ところが、機能を失った変異体についても膜内配向性は反転した。従って、後半15アミノ酸領域にはSecGの反転を膜透過促進に共役させる働きがあるものと考えられる(計画3)。これらの結果については現在論文作成中である。また、研究途中であることを発見し、報告した。これは、SecG機能がリン脂質組成と密接な関係があることを示す結果である。
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