研究概要 |
デオキシグアノシン(dGuo)を亜硝酸または一酸化窒素処理することにより生成するデオキシオキザノシン(dOxo)は新規のDNA損傷であり、そのdOxoを経由する新規発ガン機構を解明するために研究を進めている。平成9年度の研究実績を以下に述べる。 dOxoおよび、dOxoを含むオリゴヌクレオチド[d(T_5OT_6)、O=dOxo]を合成し、それらについて、N-グリコシド結合の加水分解速度を分析用高速液体クロマトグラフィにて解析した。その結果、オキザノシンのN-グリコシド結合の加水分解速度は、亜硝酸処理により同じく生成する2'-deoxyxanthosineよりも44倍遅かった。 次に、dOxoと4種の天然型のヌクレオシドがどの様な塩基対を形成するかを明らかにするため、d(T_5OT_6)とその相補的なオリゴヌクレオチド[d(T_6NT_5)、N=A,G,C,T]との二重鎖融解温度(T_m)を紫外吸収分光器で測定し、dOxoを含む二重鎖の安定性を評価した。オキザノシンを含む4種類のオリゴヌクレオチドのT_mは、14-19℃で、天然型のd(T_5GT_6)とd(T_6CT_5)の形成する二重鎖のT_m(33℃)に比べてかなり低かった。同時に、d(T_5OT_6)とd(T_6NT_5)の形成する二重鎖の溶液中の二次構造は、d(T_5GT_6)とd(T_6CT_5)の形成する二重鎖とほとんど同じであることが円二色性スペクトルによって示された。 以上の実験事実は、オキザノシンが生体内に生成するとその半減期は長く、かつ、どの塩基とも同程度に安定な二重鎖を形成することが示され、オキザノシンの生成が、様々な突然変異源となり、DNA障害を引き起こす可能性が示唆された。
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