デオキシグアノシン(dGuo)を亜硝酸または一酸化窒素処理することにより生成するデオキシオキザノシン(dOxo)は新規のDNA損傷であり、そのdOxoを経由する新規発ガン機構を解明するために研究を行った。平成10年度の研究実績を以下に述べる。 2'-deoxyoxanosine 5'-triphosphate(dOTP)をdGTPを亜硝酸処理することによって準備し、dOTPがDNAポリメラーゼの基質となってどの程度DNA鎖への取り込まれるか調べた。まず、三種類の天然型ヌクレオチドとdOTPの存在下で、M13mp18 DNAを大腸菌のDNAポリメラーゼIクレノーフラグメント(PolIKf)によって複製することによって、dOTPが天然型のどの塩基の代わりに取り込まれるかを調べた。dOTPは主にdGTPの代わりにDNA中に取り込まれ、いくらかの割合でdATPの代わりにも取り込まれた。dGTPの亜硝酸または一酸化窒素処理によって生じる主生成物である2'-deoxyxanthosine5'-triphosphate(dXTP)は、全くdATPの代わりに取り込まれなかったため、dOTPの変異源性はdXTPよりかなり高いことが示唆された。同様の結果は、3'-5'エキソヌクレアーゼ欠損のT7DNAポリメラーゼによる取り込み実験でも示された。次に、dOTPとdXTPがC及び、Tの向かいにPolIKf(exo-)によって取り込まれる頻度をdGTPと比較した。dOTPとdXTPがCの向かいに取り込まれる頻度はdGTPよりもずっと低かった。Tの向かいには、dOTPは、dGTPより1.6〜3.9倍高い頻度で取り込まれたのに対し、dXTPは全く取り込まれなかった。以上の実験事実は、dOTPが生体内に生成し、細胞内のヌクレオチドプールに存在すると突然変異の頻度は高くなることが示唆された。
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