研究概要 |
塩酸グアニジンによる変性実験から、MutSは安定性の異なる少なくとも2つの構造ドメインからなることが示唆された。また、基質特異性の異なるペプチダーゼを用いて限定分解実験を行ったところ、良く似た限定分解パターンが得られた。限定分解産物のN末端アミノ酸配列を決定したところ、MutSは4つの構造ドメインからなると推定された。ゲルシフト法を用いて、これらのドメインのうち中央部に位置するドメインが2本鎖DNAと相互作用する領域であることが示された(Kato et al., in preparation)。また、これら構造ドメインの情報を元にして断片化遺伝子を作成し、それらの大量発現と精製を行った。 ATP類似物質で親和標識試薬でもあるAdenosine triphosphopyridoxalを用いてATP結合部位を決定したところ、Walker A-typeとは異なる部位のLys171がMgイオンの有無によるATPの結合様式に関わっていることが示された(Hasegawa et al., in preparation)。生化学的性質を厳密に検討するため、ATP加水分解活性を測定したところそのKmは非常に小さいことが分かった。そこで、競合阻害剤存在下での活性測定とヌクレオチドとの結合を円二色性を用いて測定した結果から、MutSのATPに対するKmは0.1μMであることが分かった。また、MutSは2価のカチオンが存在しなくてもヌクレオチドと相互作用できることも明らかになった(Tada et al., in preparation)。また、ADP共存下でMutSの結晶化にも成功した。 さらに、MutSとともにミスマッチ修復に関わるuvrD遺伝子の単離と塩基配列の決定を行い(Hiramatsu et al., 1997)、蛋白質の大量発現系の構築を行った。mutL遺伝子についても、単離・塩基配列の決定・蛋白質の大量発現系の構築を行った(Shiba et al., in preparation)
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