研究概要 |
RACプロテインキナーゼ(別名PKB/Akt)はそのアミノ末端側にPH領域を有し、PKC、PKAに類似した活性触媒領域を有するセリン/トレオニン蛋白質リン酸化酵素である。RACプロテインキナーゼは種々の細胞増殖因子刺激に伴う、ホスファチジルイノシトール(PI)3-キナーゼ(PI3-K)の活性化により産生されるPI-3,4-二リン酸がPH領域に結合することと、分子中のリン酸化により活性化を受けることが知られている。我々は種々のストレス刺激により細胞内でRACプロテインキナーゼが活性化され、高温刺激による活性化はPI3-Kに非依存的であるが、酸化ストレスによる活性化はPI3-Kに依存的であることを見い出した。また、いずれのストレスによる活性化においてもRACプロテインキナーゼ自身のリン酸化が亢進すること、また、ストレス蛋白質の一種であるHsp27がストレス刺激特異的に細胞内でRACプロテインキナーゼと結合することを見い出した。今後、ストレス刺激時における細胞内でのPI3-Kの活性を測定し、RACプロテインキナーゼ活性化との相関について解析を行なう。また、最近、RACプロテインキナーゼ、Hsp27には細胞死およびアポトーシス抑制効果を有することが示されている。ストレスによる細胞死においても、RACプロテインキナーゼの活性化により抑制される可能性が考えられる。さらにRACプロテインキナーゼとHsp27の結合の役割も細胞死抑制と関連があることが示唆されるのでこれらの点に着目し研究を進めていく。
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