本課題研究は細胞内オルガネラのひとつであるペルオキシソームの形成およびその機能を発現するための制御機構を明らかにすることを目的としている。現在までのところ、ペルオキシソームの形成を担っているすべての因子の同定はなされておらず、その形成機構の全体像を分子レベルで解明するためには、これらの因子を同定することが必要不可欠となっている。本年度は、ペルオキシソーム欠損性のCHO変異細胞ZP107の相補遺伝子を単離することで、ヒトの新規なペルオキシソーム形成因子を同定した。この相補遺伝子(PEX1)は1283アミノ酸からなるタンパク質(Pexlp)をコードしており、AAAモチーフを持った親水性の蛋白質であった。ZP107におけるPEX1の定常発現株を分離し、形態学的だけではなく生化学的な解析を行い、PEX1がZP107の相補遺伝子であることを明らかにした。さらにZP107と同じ相補性群であるE群に属する先天性ペルオキシソーム欠損症患者について遺伝子の変異部位解析を行った。その結果、PEX1においてLeu664Proという置換変異とGly-634からHis-690までの欠失変異という2種のヘテロな変異が存在することを明らかにした。これらの変異をPEX1に導入することでペルオキシソーム形成能が失われてしまうことから、PEX1がE群の欠損症患者における病因遺伝子であることを示した。またPexlpにFLAGタグを付加しCHOK1株に過剰発現させ、FLAG抗体を用いて免疫蛍光染色したところ、細胞質に存在することでその機能を発現していることを明らかにした。現在Pexlpのペルオキシソーム形成における機能を明らかにするために、同様にAAAモチーフを持ったペルオキシソーム形成因子であるPex6pとの相互作用に注目して解析を行っている。
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