安定同位体ラベル不活性型シスタチンA(Gly4-Val)の構造解析 組換え体シスタチンAは大腸菌を用いた発現系を利用して調製した。安定回位体ラベルは、培地に[^<15>N]-NH_4Clおよび[^<13>C]-glucoseを栄養源として加え、発現されるシスタチンA分子に導入した。純化したシスタチンAを試料に、一連の多核種・多次元NMRを測定し、各シグナルを帰属した。NOEから得られる距離情報を基に、溶液構造を求めた。既に得られている野生型の平均構造は今回の不活性型の構造より精度が低いので、野生型の構造の精密化を行った後、比較した。シスタチンAの阻害活性は保存された第1ループQxVxG配列に加え、アミノ末端領域と第2ループが適当な配置で反応部位を形成しなければ発現されない。しかし、不活性変異体のN末端領域は、導入されたVal-4残基の効果でC末端部分の疎水性の部分に引き寄せられ、第1ループから離れた位置に固定されていた。これに伴い、第1ループの立体構造が変化し、さらに構造変化は第2ループにも波及したため、反応部位全体の構造が大きく変化し、シスタチンAは不活性化したと考えられる。N末端4残基あるいはC末端3残基の欠失に伴ってシスタチンAは不活性化するが、これらの機構は課題として残った。
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