以前作成したインテグレーションベクターを用いて、大腸菌イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(IPMDH)とカナマイシン不活性化酵素を高度好熱菌内で発現させることに成功した。また、遺伝子操作系の改良のためにロイシン合成に関与するleuBCD遺伝子群の構造解析を行った。さらに、その結果を生かしてleuB遺伝子のみを完全に欠失する宿主好熱菌を作製し、好熱菌内で染色体に組み込まれることなく安定に自己複製するプラスミドベクター系を構築した。その際、ピリミジン合成系遺伝子のpyrEを用いて好熱菌の染色体を容易に改変する技術を確立した。またそのプラスミドベクター系を用いて、大腸菌IPMDHおよび真核生物である酵母IPMDHを高度好熱菌内で発現させることに成功した。 これら発現細胞を高温下で培養することにより、大腸菌IPMDHと酵母IPMDHの耐熱化変異酵素を得ることに成功した。大腸菌IPMDHの変異酵素遺伝子の配列解析をしたところ、インテグレーションベクターおよびプラスミドクターの両系で同じ部位に置換が見られた。しかし、それらは異なるアミノ酸に変異していた。また、インテグレーションベクターでは得られなかった変異がプラスミドベクター系を用いて得られたことから、インテグレーションベクター系に加えてプラスミドベクター系の有用性を示すことができた。さらに真核生物由来酵素を好熱菌内で発現させ、耐熱化することに成功したのは本研究が初めてであり、耐熱化の対象となりうる酵素の範囲を大幅に拡大することができた点においても画期的成果といえる。
|