研究概要 |
本研究は同調したラット3Y1細胞を用いて、N-結合型糖鎖の生合成の制御について細胞周期依存性を含めた解析を行うことを目的としている。これまでに3Y1細胞の同調培養は接触阻止によりG_0期に移行するという性質を利用して行い、オリゴ糖・脂質中間体生成量及びその合成酵素活性量がG_1/S期に厳密に制御されていることを明らかにしてきた(J.Biochem.121,415-418,1997)。さらに、小胞体におけるオリゴ糖・脂質中間体合成のみならず、ゴルジ体に存在する糖転移酵体中でN-アセチルグルコサミン転移酵素I及びガラクトース転移酵素活性もまたG_1/S期に制御されていることを明らかにした。N-アセチルグルコサミン転移酵素Iについてはクローニングも為され、アミノ酸一次構造も判明していることから、リコンビナントを作製してポリクローナル抗体を得た。作製した抗体を用いてWestern blotting法により蛋白質発現レベルを調べたところ、酵素活性量と一致していることを確認した。さらに、接触阻止法による同調培養ではS期からG_2/M期に至っては同調が不十分に成らざるを得ないため、血清飢餓によりG_0期に移行した3Y1細胞をDNA合成阻害剤アフィジコリンを用いてG_1/S境界期に停止させ、G_2期、M期の詳細な解析を試みた。その結果、血清飢餓によるG_0状態の3Y1細胞は接触阻止によりG_0期に静止した3Y1細胞と異なり、オリゴ糖・脂質中間体合成量も各種酵素活性量も低下していないことが判明した。今後はN-結合型糖鎖合成開始のシグナルと接触阻止解除による増殖開始のシグナルとどのように関わりがあるのかを明らかにしていきたいと考えている。
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