研究概要 |
転写活性化因子CREBはふだんからDNAに結合しているがそれだけでは転写活性化能はない。Aキナーゼ等によりCREBのSer残基(マウスの場合113位、ショウジョウバエ202位)がリン酸化されることで、CREBはコアクティベータCBPに結合し、CBPを介して基本転写因子群に作用し転写を活性化する。このSerのリン酸化に依存するCREB-CBP複合体形成の分子機構を明らかにするために、まずショウジョウバエCBPのCREB結合ドメイン(KIX、85残基)の立体構造をNMRにより解析した。^<13>C,^<15>N均一標識体の調製、各種3核3次元NMR(HNCO,HN(CO)CA,CBCA(CO)NH,CBCANH,HN(CA)HA,HBHA(CO)NH,H(CCO)NH,C(CO)NH,HCCH-TOCSY,13C-edited NOESY 15N-edited NOESY)の測定・帰属、3次構造決定をおこなった。KIXは3つのαヘリックスからなるドメイン構造をとることが明らかになった。次にCREB由来のリン酸化Ser含有ペプチド(KID)をKIXに添加した際の化学シフト変化からKIXのKID結合残基(Lys38,His83,Leu84,Lys88,Tyr90,Lys94)を特定した。さらに、KIX-KID複合体についての分子内・分子間NOEの解析から、KIDはリン酸化SerのC末端側でαヘリックスを形成してKIXに結合していることが示された。このように、KIX-KID複合体が4ヘリックスバンドルに近い形で安定化されていることを明らかにすることができた。
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