研究概要 |
NMR法により、長期記憶に関わる重要な転写因子CREBとコアクティベータCBPとの相互作用の分子機構を詳細に解析し、リン酸化による転写因子の活性調節機構を分子構造に基づいて明らかにすることを目的とした。昨年度、CBPのCREB結合ドメイン(KIX)の^<13>C、^<15>N二重標識体の各種三重共鳴三次元NMRの測定および解析を行い、立体構造を決定したが、本年度は、CREBとCBPの分子間相互作用について解析を進めた。 CREB由来のリン酸化Ser含有ペプチド(KID)を^<13>C、^<15>N二重標識KIXに添加した際の化学シフト変化からKIXのKID結合残基(Lys38,His83,Leu84,Lys88,Tyr90,Lys94)を特定した。分子間NOEの解析から、これらの残基がKIDに関与していることが裏付けられた。すなわち、KIDのリン酸化Serは、KIXのLysとの静電相互作用によりKIX-KID複合体形成を安定化していることが明らかになった。Scrがリン酸化されていないと、この静電相互作用が失われるため、複合体形成は起こらない。分子内・分子間NOEの解析から、KIDはリン酸化SerのC末端側でαヘリックスを形成してKIXに結合していることが示された。このように、KIX-KID複合体は、KIXの3本鎖αヘリックスにKIDの1本鎖αヘリックス断片が結合し、4本鎖αヘリックスからなる複合体を形成することが明らかになった。
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