研究概要 |
研究代表者が作製したヒト・プロスタサイクリン合成酵素に対する8種類のペプチド抗体の性質についてイムノブロッティングによる検討を実施した。その結果,本酵素のN末端領域のアミノ酸配列の一部に対して作製した抗体及びC末端領域のアミノ酸配列の一部に対して作製した抗体が,本酵素を特に強く認識することがわかった。さらにこれらの抗体を用いて,本酵素を発現している細胞の検出を蛍光抗体法によって試みたところ,本酵素を発現している細胞を特異的に検出することが可能だった。次に、ヒト・プロスタサイクリン合成酵素cDNAとヘキサヒスチジン・タグとの融合遺伝子を作製し,これを昆虫細胞Sf9で発現させた。この細胞のミクロソーム分画を調製したのち上述のペプチド抗体を用いてイムノブロティングによる解析を行ったところ,ミクロソーム画分中の膜タンパクとして総ミクロソームタンパク質の約10%〜20%の組換え型タンパク質の発現が認められた。さらに、発現した組換え型タンパクを含むミクロソーム画分とプロスタサイクリンの前駆体であるプロスタグランジンH_2とを作用させたところ,反応液中にプロスタサイクリンの安定分解物である6-ケトープロスタグランジンF1αが多量に蓄積され,本組換え型タンパクが活性型プロスタサイクリン合成酵素活性を有することを確認した。本組換え型酵素は膜からの可溶化を行っても活性を保持していた。さらに,この可溶化画分から本組換え型酵素のタグ部分との親和性を利用したアフィニティー・カラムクロマトグラフィーによって精製を行ったところ,簡便に電気泳動的に単一で純粋な本組換え型タンパクが得られた。
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