7-デヒドロコレステロール(7-DHC)レダクターゼ(Δ7-R)はコレステロール生合成の最終段階を触媒している酵素である。近年、胎児・新生児の形態形成異常、知能発育遅延などを主兆とするホモ接合体劣性遺伝病、Smith-Lemli-Opitz症候群において、コレステロールの極端な低値に加え、7-DHCの異常な蓄積、即ちΔ7-R活性の低下と本疾患との密接な関連が報告され、その有病率の高さもあって最近注目され始めている。 シロイヌナズナΔ7-Rの一次構造中には、その酵素反応に必要な補酵素であるNADPHを結合する為のコンセンサス配列が確認できないことから、同じ酵素局在場所である小胞体膜に存在する電子伝達系成分、NADPH-シトクロムP-450レダクターゼ(fpT)がΔ7-R活性に関与している可能性が考えられた。そこでラット肝臓小胞体膜を用いて、fpTに対する抗体や精製fpTを用いてΔ7-R活性への関与の可能性を検討した。その結果、Δ7-R活性は小胞体膜電子伝達系を必要とし、そのことと伴に、Δ7-R酵素の活性中心に鉄-硫黄活性中心が関与し、その活性中心は各種プロテアーゼに耐性を示す事から膜に深く埋没している事が判明した。このことは一次構造が明らかになった際に膜におけるΔ7-Rの立体構造を推定する事や、Smith-Lemli-Opitz症候群でのΔ7-R活性低下のメカニズム解明に役立つものと考えられる。また、シロイヌナズナのΔ7-R塩基配列と良く似た配列が、データベースに登録されているヒトゲノムの部分塩基配列中に見い出され、推定アミノ酸配列も非常に良く似ていることから、この配列の一部をプローブとしてヒトcDNAライブラリーからクローニングを行ったところ、多数のクローンが得られたので、現在その塩基配列を決定中である。
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