脳内光受容と生物時計を支える分子基盤

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09780563
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 岡野 俊行 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (40272471)
• キーワード: 松果体 / ピノプシン / 光受容 / G蛋白質 / 概日リズム / 生物時計 / 光周性 / ロドプシン

研究概要

交付申請書に記載の研究実施計画に沿って研究を進め、以下の知見を得た。
【1】松果体の光情報伝達経路:ニワトリ松果体細胞において光受容蛋白質ピノプシンから光情報を受け取るG蛋白質を同定するためにまず、cDNAクローニングによるG蛋白質の検索を進めた。その結果、松果体の桿体型トランスデューシン(Gt_1α)およびG_<11>αの全一次構造を決定することができた。次に、ピノプシンと各サブクラスのG蛋白質の局在を調べた結果、上記の2種類のG蛋白質が松果体外節において光受容蛋白質ピノプシンと共存することがわかった。これと並行して、ピノプシンmRNA量の日内変動が蛋白質レベルに反映されるかどうかを調べた結果、通常の明暗周期下ではピノプシン蛋白質量はほぼ一定量に保たれることがわかった。
【2】脳深部光受容体(Deep brain photoreceptor)の検索・同定:季節性繁殖行動などの光周性を支配する脳深部(外側中隔、視床下部)の光受容体cDNAの単離を試みた。その結果、脳深部の光受容蛋白質としては初めて、ヒキガエルとハトの脳深部に存在する光受容蛋白質をそれぞれ同定し、その一次構造を明らかにした。ヒキガエル脳深部光受容蛋白質は、松果体特異的光受容蛋白質ピノプシンと高いアミノ酸一致度を示した。一方、ハト脳深部の光受容蛋白質は、網膜のロドプシンと全く同一の分子であった。さらに、これら2種類の光受容蛋白質を特異的に認識する抗体を作成し免疫組織化学的解析を行った結果、ヒキガエル視床下部とハト外側中隔の脳脊髄液接触ニューロンがそれぞれ染色された。

研究成果

• [文献書誌] Okano,Toshiyuki: "Immunocytochemical identification of pinopsin in pineal glands of chicken and pigeon." Mol.Brain Res.50. 190-196 (1997)
• [文献書誌] Okano,Toshiyuki: "Molecular cloning of heterotrimeric G-protein α-subunits in chicken pineal gland." J.Mol.Evol.44. 91-97 (1997)
• [文献書誌] Okano,Toshiyuki: "Phototransduction cascade and circadian oscillator in chicken pineal gland." J.Pineal Res.22. 145-151 (1997)
• [文献書誌] Hitunagi,Kanjun: "Immunoelectron-microscopic investigation of the subcellular localization of pinopsin in the pineal organ of the chicken." Cell Tissue Res.289. 235-241 (1997)
• [文献書誌] Takanaka,Yoko: "Light-dependent expression of pinopsin gene in chicken pineal gland." J.Neurochem.(in press). (1998)
• [文献書誌] Yoshikawa,Tomoko: "A deep brain photoreceptive molecule in the toad hypothalamus." FEBS Lett.(in press). (1998)
• [文献書誌] Wada,Yasutaka: "Identification of rhodopsin in the pigeon deep brain." FEBS Lett.(in press). (1998)
• [文献書誌] 岡野俊行: "動物の時計" 科学. 67. 48-56 (1997)
• [文献書誌] Okano,Toshiyuki: "Hokkaido University Press,Sapporo(in press)" Light perception and circadian rhythm.(分担執筆).
• [文献書誌] 深田吉孝: "中外医学社(印刷中)" 視覚異常症;図説分子病態学(改訂版).