筋特異的カルパイン欠損型筋ジストロフィー症の分子機構の解明

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09780564
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 反町 洋之 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (10211327)
• キーワード: カルパイン / 遺伝病 / 骨格筋 / システインプロテアーゼ / コネクチン / 筋原線維 / カルシウム / 筋ジストロフィー

研究概要

カルパインは、細胞質内に存在して他の細胞内タンパク質と直接相互作用し、Ca^<2+>依存的にこれらを限定的に分解し、細胞機能を調節しているプロセシングプロテアーゼである。そのアイソザイムの一つである骨格筋特異的カルパイン[p94、またはカルパイン3とも呼ばれる]は、筋肉特異的に発現する巨大弾性タンパク質であるコネクチンと結合しており、肢帯型筋ジストロフィー症2A型[LGMD2A]の責任遺伝子産物であることが同定されている。そこで本研究では、p94の欠損によって引き起こされる肢帯型筋ジストロフィー症の分子機構を、p94及びコネクチンの解析により明らかにしていくことを目的とした。
まず、LGMD2Aの患者で見られるp94のミスセンス点突然変異体を9種類作成した。これらLGMD2A点変異型p94について、培養細胞発現系、酵母Two-Hybrid系、生化学実験系等を用いて、p94とコネクチンの相互作用の詳細(結合様式、結合部位、結合強度など)を解析した結果、変異型p94ではコネクチンの2カ所ある結合部位のうちどちらか、または両方と結合できなくなっているものが存在した。さらに、各変異型p94による細胞骨格系タンパク質、フォドリンの分解活性を解析したところ、すべての変異体においてその活性が失われていることが明らかとなった。よって、この筋ジストロフィー症は、p94と基質タンパク質との正しい関係、すなわち認識及びプロセッシングのどちらかまたは両方の機能、が損なわれることによって、生じていることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Sorimachi,Hiroyuki: "Molecular cloning and characterization of a novel tissue-specific calpain predominantly expressed in the digestive tract." Biol.Chem.379(印刷中). (1998)
• [文献書誌] Sorimachi,Hiroyuki: "Expanded CTG repeats in myotonin protein kinase suppresses myogenic differentiation." NeuroRepoert. 8. 3749-3753 (1997)
• [文献書誌] Sorimachi,Hiroyuki: "Molecular cloning and characterization of cDNAs for the μ-type large subunit (μCL)and the small subunit(30K)of chicken calpain." Comp.Biochem.Physiol.(Part B). 118. 539-547 (1997)
• [文献書誌] Sorimachi,Hiroyuki: "Structure and physiological function of calpains." Biochem.J.328. 721-732 (1997)
• [文献書誌] Sorimachi,Hiroyuki: "Deletion of an endosomal/lysosomal targeting signal promotes the secretion of Alzheimer' disease amyloid precursor protein(APP)" J.Biochem.121. 585-590 (1997)
• [文献書誌] Sorimachi,Hiroyuki: "Tissue-specific expression and α-actinin binding properties of the Z-disc titin : Implications for the nature of vertebrate Z-discs." J.Mol.Biol.270. 688-695 (1997)