本研究では、代表的なセリン・スレオニンキナーゼであるプロテインキナーゼC(PKC)の細胞内活性化機構を蛋白質間相互作用の側面かた明らかにすることを目的としている。具体的には、ラット脳cDNAライブラリーから酵母Two-Hybrid法により、代表的なPKCサブタイプ6種類にそれぞれ結合する蛋白質の遺伝子を取得した。その中には、蛋白質間相互作用に関係する亜鉛フィンガーとして見出されたLIMドメインをC末端側に3コピー、および蛋白質の細胞膜局在に関係するとされるPDZドメインをN末端側に1コピー有する新しい蛋白質ENHが含まれていた。ENHは細胞内において、そのLIMドメインを介してPKCとサブタイプ特異的に結合し、PKCの細胞内での活性を用量依存的に制御することが判明した。また、ENHは心臓・骨格筋で著量発現し、またマウス初期胚(受精後7日目)において心筋細胞に特異的に発現していることも分かった。現在、ENHのノックアウトマウスを作製し、マウス循環器発生過程におけるPKC活性化の役割について更なる解析を行っている。
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