ミトコンドリアプロセシングペプチダーゼ(MPP)のα、βサブユニット機能と酵素-基質間の分子認織機構を解明するため、本年度以下の項目にしたがって研究を実施した。各項目でほぼ目標を達成でき、いくつかの新しい知見を得た。 1.活性型MPPの大量発現、精製とin vitro再構成系の確立 酵母MPPのα、βサブユニットを大腸菌で共発現させ、アフィニティーカラムで精製することによって、10リットルの培養液から約70mgの活性な酵素を得ることができた。この発現酵素は天然型のものとほぼ等しい酵素活性、性質を示し今後の構造、機能解析に利用可能である。現在、共同研究でMPPのX線結晶構造解析を進めている。 2.MPPの基質結合活性、サブユニット相互作用解析系の確立 MPPの基質結合能解析のため基質に蛍光基(プローブ)を導入、サブユニット単独、酵素複合体での定量的な結合実験を行った。この結果、サブユニット単独では基質との親和性が低く、酵素複合体で高い親和性(解離常数、約0.1μM)を示した。このことから二つのサブユニットが協調的に基質を認識しているものと考えられる。サブユニット相互作用解析では、ゲルろ過やアフィニティーカラムを用いた方法のほかに、より定量的な解析を目指して表面プラズモン共鳴を利用したアプローチを展開中である。 3.部位特異的アミノ酸変異、ランダム変異による機能残基、特異性発現残基の検索 部位特異的アミノ酸変異の研究から、基質の塩基性アミノ酸の認識に重要ないくつかの酸性アミノ酸をα、βサブユニットで同定した。このことから基質認識部位が両サブユニットにまたがって存在しいると考えられ、2.の基質結合実験からの結果、考察とよく一致する。またMPPに対するランダム変異を導入し機能欠損体を検索する実験結果から、αサブユニットのグリシンに富む領域がMPPの機能、構造に重要な役割を持っていることが示唆された。 今後、これら変異体の機能とMPPの構造解析の結果を照らし合わせて本研究を展開していく予定である。
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