まず、酵母に対する薬剤の透過性を上げるため、バリアー系と思われる膜主成分のエルゴステロール合成酵素ERG3/SYR1の遺伝子破壊株を作製した。様々な薬剤に対する感受性を調べてみたところ、変異株は多くの薬剤に対し感受性が強まった。しかしながらsst2変異株(後述)との2重変異は致死となったため(理由不明)、界面活性剤を利用することにした。様々な濃度のSDSを培地中に加え、野生株の増殖に影響の出ない濃度を設定した(0.0001%)。調べた薬剤の多くは感受性が強まり、さらに酵母に効かないと思われた薬剤に対しても効果を示した。 スクリーニング系については様々な予備実験の後、大量にサンプルを処理できる系を2つ構築した。1つめはcrv4変異株を用いた系である。crv4変異はMAPキナーゼ(MAPK)変異と重ねると増殖できないことを利用して、完全培地にcrv4株(比較のため野生株も)とSDS、それにサンプル(培養上清祖抽出液)を加え、96穴タイタ-プレート上での増殖を確認する。もしサンプル中にMAPKの阻害剤が存在したならば、crv4変異株は野生株よりもその阻害剤に対し感受性になるはずである。もう1つの系は酵母の性フェロモン情報伝達系を利用した。酵母のa型の細胞は性フェロモンα-factorにさらされるとMAPKが働き増殖を停止する。しかしながら、このときMAPKが機能していないと増殖を停止することができずに増殖し続ける。すなわち、topアガ-に菌体とSDS、α-factorを加え、ろ紙にサンプルをしみこませて、増殖円が形成されるものを選択する。α-factorは高価なので検定株にはα-factor超感受性変異株sst2を用い、コストを約100分の1にした。以上のような系によりスクリーニングを開始し、現在1次スクリーニングを行っているところである。
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