我々はグリア細胞の中間径フィラメント構成蛋白質であるグリア線維酸性蛋白質(GFAP)のリン酸化状態を特異的に認識する抗体群を用いることで、細胞分裂後期および終期に分裂溝の近傍でのみGFAPのSer-13およびSer-34のリン酸化が起こることをこれまでに報告してきた。本年度の研究で、これらのリン酸化を担うプロテインキナーゼ、、CFキナーゼ(Cleavage Furrow Kinase)の同定を試みた。GFAPのSer-8、Ser-13およびSer-34のリン酸化状態を特異的に認識するモノクローナル抗体、YC10、KT13およびKT34を用いてヒトグリオーマ細胞(U251)を免疫染色したところ、Ser-8のリン酸化は分裂前期および中期に細胞質全体で起こり、Ser-13およびSer-34のリン酸化は分裂後期および終期に分裂溝の近傍でのみ起こっていた。共焦点レーザー顕微鏡による観察の結果、分裂溝を取り巻くリング状の染色が認められた。さらにCFキナーゼの分子同定を進め、このCFキナーゼ活性が低分子量GTP結合蛋白質Rhoによって制御されるRhoキナーゼである可能性を示唆するいくつかの知見を得た。
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