近年、血管機能障害の一因として血中ホモシステイン濃度の上昇が指摘されている。昨年度我々は、ヒト血管内皮細胞におけるホモシステイン応答遺伝子7種を同定した。一方、動脈硬化促進物質として知られているリゾフォスファチジルコリンに応答する遺伝子12種も同定した。すると、いずれの刺激によっても発現量が増加する未知遺伝子1つが存在した。この遺伝子は、新規蛋白質(RTPと命名)をコードすることが推定された。現在のところRTPの生理機能は全く不明である。そこで本研究の目的をRTPの機能解明として解析を進めている。1.RTP特異的抗体の作成 まず、RTPに対するcDNAの蛋白質コード領域をGST遺伝子の下流に挿入した発現ベクターを構築した。これを大腸菌に導入し、RTP-GST融合蛋白質を発現させた。この融合蛋白質を抗原としてウサギを免疫することにより、RTPに特異的に反応する抗血清の作成に成功した。得られた抗体でウェスタンブロット解析を行った結果、RTPは約47kDaであり、mRNAと同様に細胞のホモシステイン処理での発現量増加が確認された。2.RTPの細胞内局在 培養皿上で固定処理した血管内皮細胞に抗RTP抗体を反応させた後、蛍光標識二次抗体を反応させ、共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、RTPは細胞質に均一に存在することが明らかになった。3.RTPの組織内局在 正常マウスから様々な組織を摘出し、その懸濁液をウェスタンブロット解析したところ、特に腎臓においてRTPの発現量が高かった。そこで組織切片を免疫染色した結果、腎臓におけるRTPの発現は近位尿細管での発現量によることが判明した。なお、これらの成果は、第70回日本生化学会大会(金沢、9月)およびThe lnternational Conference on Dynamics and Regulation of the Stress Response (京都、3月)において発表した。現在、論文投稿準備中である。
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