「細胞骨格系のアクチン線維と結合した細胞膜の膜貫通型蛋白質が、アクチン線維間の滑り運動によって細胞膜上を輸送されている」という仮説を検証することが本研究の目的である。そのために、前年度に開発した2光子励起蛍光顕微鏡を用いた光褪色法を用いて、膜骨格系のアクチンフィラメントの運動を測定し、膜タンパク質の運動との相関を求めることを計画した。 本年度は、前年に名古屋大学から大阪大学へ移動したため、新たに、大阪大学において2光子励起蛍光顕微鏡の立ち上げをおこなった。極超短パルスのTiサファイアレーザーを光源とし、市販の共焦点顕微鏡スキャナーを改造して倒立顕微鏡に接続し、2光子励起蛍光顕微鏡とした。この装置が以前に使用していた装置と、空間分解能、S/N等において同程度の性能を持つことを確かめた。 細胞内のアクチン線維を蛍光標識するために、化学標識したアクチンモノマーを顕微注入する予定であったが、より効率よく、細胞に対するダメージもなく実験をおこなうため、GFP融合アクチン遺伝子を培養細胞に発現させることとし、クローニングによってGFP-アクチンを安定に発現する細胞株を得ることができた。 この細胞を2光子励起蛍光顕微鏡で観察し、ドーサル面の細胞膜直下約1μm程度の厚さの断層像で、膜骨格系と思われるアクチン線維のネットワークを見ることができた。 このように、光褪色法でアクチン線維の動きを測定する準備が整ったので、今後は当初の計画通り実験を進めていく。
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