粘菌変形体に特徴的である扇型の形態パターン(以下ファンと呼ぶ)が生成するプロセスの画像処理的計測を行ない、ファンにおける細胞内リズムの時空間ダイナミックスとそれを拘束する形態パターンの間での相互依存的関係を調べた。特に、粘菌の細胞内リズムは画像データから各部分の原形質分布の時間的変化として記録し、また形態パターンは原形質の空間分布としての画像からフラクタル構造として記録した。これらの結果を、細胞内リズムの相互引き込みによる位相パターン生成とリズムの結合構造としての形態パターン生成の間での相互干渉ダイナミックスとして解析した。その結果、1)細胞内リズムにおける位相的コヒーレンスは周期1〜2時間程度で生成と崩壊を繰り返していること、2)形態パターンの生成も周期1〜2時間程度で生成と停止を繰り返していること、3)さらに位相的コヒーレンスの生成崩壊サイクルと形態の周期的変化は同調しており位相差が1/4周期程度であることを明らかになった。これらの結果は、コヒーレンスの生成崩壊サイクルと形態生成のサイクルが相互に拘束し合っていることを示唆しており、結合振動子系とそのカップリング構造の相互拘束としてモデルを構成しつつある。
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