動的ラウエ回折実験の予備実験として、まず、大腸菌由来7α-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(7α-HSDH)と補酵素NAD^+との複合体結晶をこれまでに確立した方法で結晶化した。次いで、基質グリコケノデオキシコール酸を含む溶液に作製した結晶を一昼夜浸した後、放射光研究施設ビームライン18Bにおいて大型イメージングプレートを使ってラウエ回折強度データを収集した。露出時間としては20ミリ秒程度で十分であるが、正方晶系であるので十分量のデータを得るためには結晶の方向を変えて数枚のラウエ写真の撮影が必要であること、および合計で数百ミリ秒程度までは損傷を受けないことを確認した。得られたラウエ回折強度データを用いて構造解析を行ったところ、補酵素と酵素反応の産物である7-オキソグリコケノデオキシコール酸を同定することができた。しかしながら、R-mergeが20%を超えているので、良質の結晶を得るために、更なる結晶化条件の改良が必要である。基質の結合していない結晶に対してもラウエ回折実験を行ったが、良質なデータを得ることはできなかった。すなわち、基質や反応産物、あるいはその類似体が結合している方がより安定であるということができる。 ケージ化基質である7位をオルトニトロベンジル化したケノデオキシコール酸の7α-HSDHの結晶への導入は、溶解度が低いために成功しなかった。溶解度を上げるためにはケノデオキシコール酸のグリシンもしくはタウリンによる抱合化が必要であることが判明した。
|