1. タコ口ドプシンキナーゼの自己リン酸化がロドプシンリン酸化反応に及ぼす影響 タコ口ドプシンキナーゼは、内在性の活性化因子であり、かつ基質であるロドプシンの存在、非存在下に関わらず自己をリン酸化しうる。自己リン酸化されるアミノ酸残基はまだ明らかではないが、ウシロドプシンキナーゼの自己リン酸化部位(488Ser、489Thr)に相当するアミノ酸は酸性アミノ酸(493Asp、496Asp)に置換されている。そこで、タコロドプシンキナーゼの自己リン酸化がロドプシンリン酸化反応に及ぼす影響を検討したところ、タコ口ドプシンキナーゼの自己リン酸化前処理によりロドプシンのリン酸化はほぼ半減した。実験で用いた自己リン酸化口ドプシンキナーゼ標品は非リン酸化キナーゼを含むと考えられ、より詳細な解析には自己リン酸化キナーゼだけを単離する必要があるものの、タコ口ドプシンキナーゼの自己リン酸化によりロドプシンのリン酸化、そしておそらく視細胞の光応答が調節されている可能性が示唆された。 2. タコ口ドプシシリン酸化における"high gain phosphorylation"の可能性の検討 ウシ口ドプシンのリン酸化においては、光活性化されたロドプシンの量以上のリン酸化が観察される、いわゆる"high gain phosphorylation"が報告されている。そこで、種々の量比で活性、不活性のタコ口ドプシンを混合した状態でリン酸化量を定量したところ、リン酸化量は活性化されたロドプシンの混合比に比例していた。これは、光活性化されたロドプシンのみがリン酸化を受けうることを示しており、タコ口ドプシンでは"high gain phosphorylation"は起きないと考えられた。この相違が、各ロドプシンキナーゼの性質によるものか、基質であるロドプシンの構造にも関連があるのかについては、さらに検討が必要である。
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