本年度は主に次の2点について重点的に実験を行った。 (1)水溶液中での修飾電極の観察 (2)電極表面に吸着した蛋白質の観察 (1)について、有機分子で修飾した金属電極ないしは金属基板の液中観察は非常に例が少ない。この半年程度の間にドイツのグループから数編の論文が発表された程度である。それも、彼らの場合は疎水的な有機分子表面を有機溶媒中で観察している。本研究では蛋白質の吸着を目的としているため、メルカプトピリジンなどの親水的な分子を用い、また水溶液中での観察を試みた。その結果、水溶液中での電極表面の構造は大気中で観察した場合と全く異なることが判明した。これは分子が親水的であることに起因しているのではないかと考えられる。 (2)について、ヘモグロビン、チトクロムcの2種類の蛋白質分子を修飾電極表面に吸着させてSPM観察した。ヘモグロビンについては水溶液中での観察に成功した。チトクロムcについては乾燥させた試料を大気中で観察して、吸着した蛋白質分子の分布を貸しかすることができた。また水溶液中で観察したが、ヘモグロビンに比べ分子が小さいため、アーチファクト(不純物や修飾電極そのものの凹凸)ときちんと見分けるためには、なお検討が必要である。
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