研究概要 |
天然タンパク質の基本的な構造モチーフのひとつである4本ヘリックスバンドルを骨組みとした一連の人工ヘムタンパク質を作成し、それらの酸化還元電位、配位子結合特性および分子状酸素との反応性を調べた。4本ヘリックスバンドルに結合するヘムの種類(protoheme,heme A)を変えると,全体構造の変化(parallel⇔antiparallel)とその構造変化による酸化還元電位の変化が観測された。これらの人工タンパク質では、シトクローム類など天然のヘムタンパク質とは異なり、ヘム鉄の内存性配位子のひとつであるヒスチジン残基が、容易にシアンや一酸化炭素などの外来性の配位子置き変わり、これらの還元型を空気と接触させると、速やかに自動酸化された。これらのことを利用して、天然の還元酵素を使って人工ヘムタンパク質を触媒的に還元し、分子状酸素と反応させることによって、オキシダーゼ様の酸化還元系を構築した。 一方、一般的な球状タンパク質の分子設計法の開発に向けて、マッコウクジラミオグロビンの立体構造をターゲットとして選び、天然タンパク質の構造データベースから得られる経験的ポテンシャルエネルギーに基づいて、153アミノ酸からなる人工グロビンの配列設計を行った。得られたアミノ酸配列は、天然配列と25%程度のホモロジーをもち、計算上、分子量18.6kDa、等電点5.8を示した。分子グラフィクスを使って、得られた配列をミオグロビンの立体構造に乗せて3Dモデリング/分子力学計算を行った結果、主鎖原子のr.m.s.差0.12Å以内ではほぼ完全に非結合原子間のぶつかりが除去され、天然のX線結晶構造とほぼ同数の水素結合が検出された。
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