研究課題
プラストシアニンは、シアノバクテリアから高等植物にいたる光合成生物に広く分布しており、チラコイド膜のCytb6/f複合体のCytfから電子を受け取り、光化学系I反応中心複合体のP700へ電子を供与する光エネルギー変化反応に必須の水溶性蛋白質である。一般に還元状態でpHが5.0以下になると徐々に電子伝達活性を失い4.0以下では全く失活することが知られている。とこらが、本研究で取り扱ったオシダ由来プラストシアニンは、長野県八千穂村高原地帯に生息するオシダより精製したものであるが、その[Fe (CN)_6]^<3->に対する酸化反応の2次速度定数は、pHが5以下に下げても変化しないどころか、むしろ活性が上がることが判った。つまり、本蛋白質は、「耐酸性を有した新種のプラストシアニン」であることが判明した。オシダDryopteris crassirhizoma由来の新種のプラストシアニンのX線構造解析を1.7Å分解能で行った。その結果、シダ植物由来のプラストシアニンの銅イオンの配位子であるHis37のイミダゾール環とフェニルアルアラニンのベンゼン環との間に「π-πスタッキング相互作用」があることが判明し、これが低いpHでも高活性を保持する原因であることが明らかとなった。金属イオンの配位子に直接スタッキングする例は、全ての金属蛋白質で2例目、また全てのブルー銅蛋白質では初めての報告例であり、8th International Congress on Bioinorganic Chemistry (ICBIC;第8回国際生物無機化学、1997 7/27-8/1、日本横浜)でも高い評価を得た。
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