ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)遺伝子は、テトラヒメナ、出芽酵母、ヒトから相次いで、クローニングされ、出芽酵母のアミノ酸代謝系の多くの遺伝子の転写調節因子(Gcn5p)と同一であることから、ヒストンのアセチル化によるクロマチン構造変化と、遺伝子発現制御を繋ぐ因子として注目されている。本研究の目的は、HAT蛋白によりアセチル化されたヒストンが、クロマチン構造を改変し、特異的遺伝子の発現を調節する機構を、生化学的、遺伝学的、分子生物学的手法により分子レベルで解明することである。 本研究で得られた知見、成果を以下に要約する。 1)GCN5遺伝子の新しい変異株を2種単離できた。 2)これら変異は、ヒストンのアセチル化活性が20%、5%に低下していた。 3)これら変異の生育速度は、それぞれ75%、70%に低下していた。 4)これら変異を用いることにより、ヒストンのアセチル化活性と遺伝子発現制御の詳細を検証できると考えられる。 今後、本研究の展開に関する計画は以下の点である。 1)単離されたヒストンアセチル化能の異なる変異株による、遺伝子発現制御能の変化を解析する。 2)GCN5遺伝子の、更に新しい変異株の検索を試みる。 3)GCN5遺伝子が制御する、新たな特異的遺伝子群を検索する。
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