出芽酵母のGCN5遺伝子はヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)の触媒サブユニットをコードしている。この酵素がコアヒストンをアセチル化しクロマチン構造を変化させることにより転写を促進するというモデルが提唱されている。本研究の目的は、GCN5蛋白による特異的遺伝子の発現機構を生化学的、分子生物学的手法により分子レベルで解明することである。 本研究で得られた知見、成果を以下に要約する。 1) GCN5遺伝子にin vivo mutagenesisにより変異を導入し4種のmissense変異体を分離した。 2) これら変異は全て3-aminotriazoleに超感受性であった。 3) これら変異のうち2種はHAT活性が低下し、残りの2種はHAT活性が残っていた。 4) これら変異は全てHIS3の転写活性が低下していた。 これらの結果から既知のHAT活性に必須のアミノ酸残基に加え、新たに細胞内でGCN5蛋白と結合する因子との結合に必要なアミノ酸残基の存在が示唆された。 今後、本研究の展開に関する計画は以下の点である。 1) 単離されたピストンアセチル化能の異なる変異株による、遺伝子発現制御能の変化を解析する。 2) GCN5遺伝子の、更に新しい変異株の検索を試みる。 3) GCN5遺伝子が制御する、新たな特異的遺伝子詳を検索する。 4) GCN5蛋白と結合する因子を検索する。
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