尾索動物マボヤ(Halocynthia roretzi)ミトコンドリアDNAの解析の過程で、NADHデヒドロゲナーゼサブユニット4L(ND4L)遺伝子が、その下流のtRNA^<Cys>遺伝子と、同一転写方向で10塩基重なっていることが推測された。後生動物ミトコンドリアtRNAの遺伝子が下流遺伝子と同一転写方向で重なっている場合、そのtRNAがRNA編集の対象であることが知られている。遺伝子の重複の組み合わせはそれとは異なるが、このtRNA^<Cys>とND4LmRNAでもRNA編集がないかを検証した。tRNA^<Cys>と、その遺伝子の下流に配置しいかなる遺伝子とも重複していないtRNA^<Lys>遺伝子の産物であるtRNAとを、環状化して、そのcDNAを合成し、PCRで増幅後、クローニングし、その塩基配列の解析を行った。その結果、tRNA^<Cys>では5'-末端に4塩基の伸長が見られるた。また、ND4L mRNAの3'-末端領域は、oligo dTプライマーを用いてcDNAを合成し、そのプライマーとND4L mRNA特異的プライマーを用いたPCRによってcDNAを増幅し、クローニング後、塩基配列の解析を行った。ND4LmRNAでは塩基配列を解析したcDNAの大部分で、終止コドンが見られない、と言う結果が得られた。さらに、ND4L mRNAでは、遺伝子の塩基配列とは異なる塩基が一部見られるので、これがRNA編集に関係ないかどうかを検証中である。また、マボヤミトコンドリアの小サブユニットリポソームRNAの5'-末端及び、3'-末端のRNAレベルの配列を、cDNAの塩基配列を解析することによって明らかにすることを試みた。その結果、この小サブユニットリポソームRNAは、現在知られているものの中で最も短いものの一つであることが推定された。
|