近年、多岐に渡る遺伝子の転写調節に共通して働く因子の中に、SWI/SNIF複合体のようにクロマチンの構造変化に関与するものや、p300/CBPあるいはRbp3pのようにヒストンのアセチル化および脱アセチル化の活性を有している因子が見つかってきた。これらにより遺伝子の転写因子からの研究とクロマチン構造からの研究がまさに交差し合うようになった。そこで、in vitroで転写活性とクロマチン構造を併せて解析することが可能なdinucleosomeの系を用いて以下の3点について研究に取り組んだ。 1、ヒストンアセチル化の影響。 アセチル化の程度の異なるヒストンをHeLa細胞から調整し、dinucleosomeを再構成して構造比較を5つの方法(2次元アクリルアミドゲルを用いたヌクレオソーム移動性解析、ヌクレアーゼ消化速度によるヌクレオソーム安定性解析、ヌクレオソームポジション解析、hydroxylradical footprinting、アガロースゲルを用いたリンカーヒストンの結合解析)で行ったが、アセチル化による構造の変化は何も検出されなかった。しかしXenopus oocyte核抽出液を用いたin vitroの転写では、アセチル化により5S遺伝の転写が活性化された。 2、原子間力顕微鏡によるdinucleosomeの構造解析。 ビオチン標識したオリゴプローブを用いてPCRでDNA断片を増幅し、non-RIのdinucleosomeを作製し、原子間力顕微鏡での解析を行った。 3、より詳細に転写機構を解析するためのdinucleosomeのDNA鋳型。 一方の5S遺伝子のプロモーターにSP6プロモーターを挿入し、2種類の異なるRNA polymeraseで転写される遺伝子を1つずつ含む新しいDNA鋳型を作製した。
|