RNAポリメラーゼII(Pol II)は、12種のサブユニット蛋白質で構成される。このうち、分裂酵母での遺伝子クローニングが遅れていたRpb4、Rpb9の2つのサブユニットの遺伝子をクローニングし、12種全ての遺伝子の単離を完了した。これらのcDNAを組み込んだバキュロウイルス発現ベクターを作製して、全てのサブユニットを昆虫細胞内で同時に発現させることに成功した。発現サブユニットに導入したタグに対するアフィニテイを用いた解析で、部分的なPol II様複合体の構成が認められた。 また、Pol IIの本体構造についての解析を行い、以下の結果を得ている。 精製Pol IIを架橋試薬で処理し、ウェスタン法でサブユニット間架橋体を同定する方法と、組換えサブユニット蛋白質を用いたファーウェスタン法による解析で、サブユニット間相互作用の全体像をほぼ決定した。小型サブユニットは、それぞれ、Rpb1、Rpb2の二つの大型サブユニットの一方または両方と相互作用をもち、小型サブユニット間の相互作用は、Rpb3-Rpb10、Rpb3-Rpb11、Rpb5-Rpb6、Rpb6-Rpb7、Rpb6-RPb8の間で検出された。 また、試験官内で構成した伸長複合体のRNA3'末端に光反応性のUTP誘導体を導入し、伸長途中のRNAをPol IIに架橋して、活性中心を構成するサブユニットを特定した。活性中心はRpb1.Rpb2の二つのサブユニットにより構成される。さらに、架橋後これらのサブユニットを単離し、酵素で限定分解することにより、アミノ酸番号でRpb1の509-917、Rpb2の306-530、934-994の領域が活性中心の近傍に存在することを示した。
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