研究概要 |
ショウジョウバエでMAPキナーゼシグナル伝達系の新規因子を同定する目的でMAPキナーゼキナーゼ(Dsorl)との遺伝的相互作用を示す突然変異の検索が行なわれ、染色体の分配異常などの表現型がDsorlの活性型突然変異により抑圧され、逆にcyclmA,Bの突然変異により表現型が増強される突然変異Gp99を同定された。Gp99の遺伝子クローニングの結果、翻訳産物はMAPキナーゼの標的配列をもつ新規蛋白質であり、相同性の高い遺伝子が酵母、線虫、ヒトに存在し、進化的に広く保存されていることが判明した。出芽酵母におけるその遺伝子の破壊実験から酵母において細胞周期の進行に必須鵜であることが判り、Gp99遺伝子はMAPキナーゼシグナル伝達系と関連した新規の細胞周期因子だと予想される。しかし、Gp99遺伝子が新規蛋白質をコードするため、MAPキナーゼシグナル伝達系及び細胞周期制御系における作用機構は不明であり、その解明の為には遺伝的レベル、分子レベルでGP99と相互作用する因子の同定が重要である。そこで以下のことを行った。 1)強制発現実験:ショウジョウバエ成虫の複眼は細胞が規則的に配列した繰り返し構造で、その形成過程では細胞周期の緻密な制御がなされいる。UAS-GAL4システムを用いてGp99遺伝子を複眼の形成過程で強制発現させたところ、複眼の細胞配列に乱れが生じたことから、Gp99遺伝子の発現制御が複眼形成の細胞周期制御においても重要であることが示唆された。今後、細胞配列に乱れが生じる原因を細胞レベルで解析すると共に、細胞配列の乱れを抑圧もしくは増強する2次突然変異を検索し、相互作用する遺伝子を同定する計画である。 2)相互作用遺伝子の検索:Gp99突然変異は成虫の剛毛が短く細くなる表現型を示し、それは剛毛形成細胞の細胞周期進行異常に起因していると予想される。Gp99突然変異の剛毛表現型を抑圧もしくは増強する2次突然変異を検索したところ、抑圧する系統が一つ単離され、解析中である。
|