前年度に単離した、γ-チューブリンの機能に関連のある因子をコードする遺伝子に変異を持つ突然変異株5株の内、低温感受性株2株について解析を行った。まず、これら変異株、cs42とcs76について間接蛍光抗体法による微小管染色を行った。cs42変異株ではスピンドルは正常に形成されるが、分裂後期に特異的な細胞質微小管の形成に異常があることが明らかになった。cs76変異株では、細胞質微小管の消失、異常なスピンドルの形成が観察された。平行して行った核染色像により染色体領域の凝縮や巨大核が観察され、この株では微小管系の構成および微小管による核分裂機構が阻害されていることが明らかになった。cs76変異株に分裂酵母ゲノム遺伝子ライブラリーを形質転換し、低温で生育可能となった形質転換体を複数得た。形質転換体の低温での生育は、ライブラリープラスミドに依存しており、プラスミド中のゲノムDNAが、変異の相補に必要であることが推定された。変異株の解析と平行して、分裂酵母におけるγ-チューブリン量の、生育への影響を調べた。発現の誘導が可能な分裂酵母のnmt1プロモーターとその弱力化変異プロモーターの支配下にγ-チューブリン遺伝子を置き、分裂酵母に形質転換した。弱力化変異プロモーターを用いた場合、分裂酵母はそれを唯一のγ-チューブリン遺伝子として生育可能である(昨年度本研究)。強いプロモーター制御下のγ-チューブリン遺伝子をゲノム中に挿入した株を作成し、その性状を解析した。この株は、γ-チューブリンの発現を誘導した場合に致死となり、その際のγ-チューブリン発現量は野生株の160倍であった。γ-チューブリン高発現株では、細胞質微小管は消失しており、多くの細胞が分裂期で停止していた。これらの結果は、分裂酵母内でのγ-チューブリンの活性制御機構の存在を示唆している。
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