私は低血清条件で過剰にアポトーシスをおこし、また血清存在下では細胞増殖速度が速くなっているCHO細胞変異株を分離した。この中には劣性の性質をしめす株が存在し、更に3種類以上の相補性群に分類され、DNAに傷害が生じてもDNA複製が停止せず8倍体細胞が出現するため、増殖停止シグナル伝達に異常がる株であることが示唆された。変異株の原因遺伝子は新規の癌抑制遺伝子の可能性があり増殖停止機構について新たな知見が得られると考え、各変異株の性質を機能的に相補するクローンを選択する事により原因遺伝子を単離する事をめざいている。野性株では無血清条件では代謝の一部が停止しているので、ヌクレオチドアナログに対して抵抗性をしめすが、変異株では代謝が停止していないので感受性となる。したがって変異株に遺伝子ライブラリー導入した後、低血清状態で ヌクレオチドアナログを加えることにより、原因遺伝子を獲得した細胞のみが生き残り、他の細胞はほぼすべて死滅する。この性質を利用して遺伝子の単離を行っている。現在に至るまでhprt遺伝子が不活性化されたCHO変異株に対してヒト由来のジェノミックDNAを変異株細胞に導入し、ヌクレオチドアナログに 抵抗性となった細胞(一次トランスフォーマントの候補)を単離を試みているが、ヒトのジェノミックDNAを含む様なクローンが得られていないのが現状である。現在、変異株のhprt遺伝子が正常な株を用いてクローニングを行っている。
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