MAPKスーパーファミリーの各分子がIL-2産生のシグナル伝達経路におよぼす影響を評価するために、MKK6(p38の上流因子)の優性不能型変異体、ならびにMKK7(JNKの上流因子)の優性不能型変異体を作製した。これら変異体を、IL-2遺伝子の転写調節領域の下流にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだレポーター遺伝子とともにヒトT細胞株であるJurkat細胞にtransfectして、IL-2遺伝子の発現調節機構への影響を調べた。その結果、MKK6の優性不能型変異体ならびにMKK7の優性不能型変異体は、ともにT細胞の活性化にともなうIL-2の遺伝子発現を抑制することが明らかとなった。我々はp38の特異的阻害剤であるSB203580を用いた際にも同様にIL-2の遺伝子発現が抑制されることを見い出した。興味深いことに、MKK7の優性不能型変異体とSB203580を組み合わせた際には、より顕著なIL-2遺伝子の発現抑制が観察された。同様の結果はIL-2の転写調節領域に存在するNF-AT領域のリポーター遺伝子を用いた際にも観察された。以上の結果は、MAPKスーパーファミリーに属するp38ならびにJNKのカスケードが、ともにNF-AT領域の活性調節を介してIL-2産生のシグナル伝達経路に関与していることを示唆するものである。 以上の新知見をもとに、次年度はMKK6の恒常活性型変異体ならびにMKK7の恒常活性型変異体の作製を行い、p38カスケードやJNKカスケードを恒常的に活性化された際にNF-AT領域を介した遺伝子発現が増強されるか否かを検討する。
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