本研究代表者は、DNA複製開始に必須なMCM遺伝子と遺伝学的に関係のあるsna41を単離している。MCM蛋白質は細胞周期全体を通して核に存在するが、DNAとの結合は各ステージごとに変化する。Sna41蛋白質が細胞周期において局在がどのように変化するか、それがMCM活性化とどのように関わるか明らかにするために以下の解析を行なった。 まず、Sna41蛋白質に対する抗体の作製を試みた。大腸菌で大量にSna41蛋白質を発現し、精製してウサギに免疫した。できた抗体はSna41蛋白質以外の多くの蛋白質も認識したため、大腸菌で作製した蛋白質あるいは合成ペプチドを用いてアフィニティー精製を行なったが、他の蛋白質の認識活性は消失しなかった。これらの蛋白質は同じエピトープを持つ可能性も考えられ、この抗体は実験に用いることはできなかった。 良い抗体が得られなかったため、Sna41蛋白質にタグをつけた融合蛋白質を分裂酵母細胞で発現し、タグによりSna41蛋白質を検出した。C末にFLAGを結合した融合蛋白質を強力なプロモーター下で発現し蛍光抗体法により観察すると、核に存在するもの、細胞質全体に存在するものなどが認められ、細胞周期により細胞内局在が変化する可能性が示唆された。次にC末にEGFPを結合し、ownのプロモーター下で多コピーで発現し、細胞周期における局在の変化を調べた。G1期およびS期初期の細胞では核に局在が認められたが、G2期の細胞では細胞内における発現が認められなかった。細胞質に存在したのは発現量が多過ぎたためと考えられ、また、Sna41蛋白質はDNA複製に先だち核に存在し、DNA複製が終了すると核から消失することが明らかとなった。さらに詳細な局在を調べるため、Sna41-EGFP融合蛋白質をコードする遺伝子を染色体上に組み込み、安定に融合蛋白質を発現する株を作製したが、蛍光抗体法およびウェスタンブロット法どちらにおいても発現が検出されなかった。発現量が少ないためと思われるので、検出感度の高いHAのタグをつけたSna41蛋白質をコードする遺伝子を染色体上に組み込んだ株を現在作製している。
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