発生時に、嗅球の僧帽細胞の軸索は終脳の外側表面を選択的に伸長し、嗅索を形成する。我々は、僧帽細胞の軸索伸長経路である予定嗅索領域に結合するモノクローナル抗体のスクリーニングを行い、嗅索周辺の細胞を特異的に認識するモノクローナル抗体MAb lot1(31C2を改名)を得た。今年度はこの抗体の認識する抗原(lot1抗原)の発現解析を行った。 MAb lot1による染色はマウス胎生120日目(E12.0)から終脳表層の予定嗅索領域で観察され始め、E14.5で最大になった。しかしこの時期でもMAb lot1による染色部位は非常に限られており、嗅索のすぐ近傍の梨状葉第1層が最も強かった。他には間脳の1部でわずかに染色が認められた程度で、神経系以外にはまったく染色は認められなかった。更に発生が進むとMAb lot1による染色性は急速に弱まり、生後には完全に染色性が失われた。lot1抗原は細胞の中では核周辺に強く局在していおり、ゴルジ体との関連が考えられた。また嗅索周辺の細胞を培養してMAb lot1で染色してみたところ、lot1抗原の一部は細胞外に放出され細胞膜に結合していると思われた。 lot1抗原の発現が最も強いと思われるE14.5嗅索周辺部から蛋白質を調整し、MAb lot1でWestem Blottingを行ったところバンドは検出されなかった。しかし終脳組織を蛋白分解酵素処理するとMAb lot1による染色性は減少することから、lot1抗原は蛋白質である可能性が高いと思われる。現在MAb lot1による免疫沈降を試みている。
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